
冬アニメ『僕の心のヤバイやつ』第2期連載インタビュー第5回:南条ハルヤ役・島﨑信長さん|今のナンパイはチャラチャラしてはいるけど、山田さんへの思いは本物だったと思うんです。だから僕も必死に告白しました。
TVアニメ『僕の心のヤバイやつ』第2期が、テレビ朝日系全国24局ネット“NUMAnimation”枠・BS朝日・CSテレ朝チャンネル1にて放送されています。桜井のりお先生が『マンガクロス』(秋田書店)で連載中の『僕の心のヤバイやつ』は、SNSを中心に人気を集め、コミックス累計発行部数400万部を突破中の話題作です。
アニメイトタイムズでは第1期に引き続き『僕ヤバ』連載インタビューを実施中です。連載5回はナンパイこと南条ハルヤを演じる島﨑信長さん。ナンパイといえば、少しナンパな、チャラい先輩。でも18話ではそのナンパイの、男気溢れる一面が透けてみえるような内容に。18話のアフレコを終えたばかりの、島﨑さんにお話をうかがいました。
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『僕ヤバ』は一つひとつが手作り。型にハマってない。
――島﨑さんにお話をうかがうのは初となるので、第1期をご覧になった感想から教えてください。
島﨑信長(以下、島﨑):面白いですよね。山田さんとイチなんとかくんが……イチだか、2だか、3だか分からないけど(笑)、絶妙な距離感で進んでいって。実はナンパイが、邪魔そうに見えてアシストしてるっていう。
――そうなんですよね! ナンパイがいないとふたりは進まなかったんじゃないかと思うほど。
島﨑:ああいう役は大事なんですよね。実はキューピットなんじゃないかっていう。ただ、第1期だけだと「ナンパイ、まじでイヤなヤツ」で終わってしまうから(笑)。まだ第2期を見てないという人は、第2期も見てもらえたらと。
『僕ヤバ』の魅力のひとつに、原作はもちろんなんですけど、アニメーションも“よくある感じ”で作っていないことが挙げられるのかなと。ジャンルで言えばラブコメじゃないですか。もっとテンプレート的に……と言ったら変な言い方ですけども、記号的に作ることもできると思うんです。今はたくさんの型がある時代ですから、型通りに作っても綺麗に仕上がるんじゃないかなと。
でも、『僕ヤバ』は一つひとつが手作り。丁寧に作られていて。だから現場も細やか。中には、なかなか高度なディレクションもあります。赤城監督と小沼音響監督には以前も別作品でお世話になっているのですが、その時も細やかに作られていて。今回もそれは変わらず。テンプレートではなく、手作りしていった感じですね。だから当然(おふたりの)ディレクションは厳しいと思いますよ。

――小沼音響監督は、等身大を大切にされているというお話をしていて。
島﨑:そういうことなんですよ。等身大ってテンプレートでできないんですよね。型を作ってしまうと、等身大ではなくなってしまうから。いかに型にせず、その場で、聞いて、感じて、心を動かして、言葉にしたり、返したりができるかという。小沼音響監督の引き出し方も面白いです。他の人のディレクションを聞いていても「面白いなあ」「高度なことを要求されているなぁ」と思ってます。ものすごく勉強になりますね。
――ちなみに、ナンパイにはどのようなディレクションがあるんです?
島﨑:「ここはもうちょっと感情を出す、出さない」とか。細かい調整がメインです。意外とナンパイって、わかりやすく見えて、内に秘めたものがあるんですよね。そのいろいろな感情を内包したものを要求される現場だったなって。
それと、ナンパイって一見お邪魔キャラっぽいじゃないですか。見てくださっている側の人たちにはそう捉えてもらって全然良いんですけど、作っている側としてはひとりの人間として見ていました。だから、よくいるイケメンのお邪魔キャラ、って捉え方をしていなかったんです。記号的な捉え方をしていない、と言うのかな。彼は彼で、自分の人生を生きていて、いろいろな事情があって今はこういう発信の仕方をしてるんだよ、というのを考えていました。でもその裏には、「実はこう思っているんじゃないかな」とか想像をしながらね。
――キャラクターの捉え方も、型にハマることなく。それは島﨑さんがさきほどおっしゃっていた通り、物語全体にも言えることですね。
島﨑:だからこそリアリティが出るんですよね。アニメーションってフィクションだから、現実世界のリアルに寄せる必要はないと思うんです。例えば必殺技を叫んで ビームを出す作品も、魔法を使える作品もリアルではないじゃないですか。だから、僕らの住む現実世界に寄せる必要はないけども、作品の中のリアリティを丁寧に手作りしていくと突き詰めていけるものなのかなと。その世界のリアルが、視聴者からするとリアリティになって、共感したり、引き込まれたり、心が動いたりする。塩梅をどれくらいにするかによって、その登場人物が「生きてる」感が際立つというか。
『僕ヤバ』の世界の常識は僕らが生きる世界の常識と変わらないけど、この作品の中でのリアリティってものがあって。概ねアニメってこうだよね、じゃなくて、『僕ヤバ』はこうやって作っていくんだ、という気概があるんですよね。原作も絶妙な塩梅の距離感、表現があるなぁと思うんですけど、アニメの中でも淡く、繊細な魅力を出そうとされているし、実際に出ているなと。

注目したのはナンパイのバックボーン
――少し話が遡りますが、もともとナンパイ役が決まったときはどのような気持ちだったんでしょうか?
島﨑:オーディションではなかったんですよ。指名でお話をいただき、赤城監督だし、小沼音響監督だし、シンエイ動画さんだし、と。お世話になった座組でまたできるんだなあと嬉しい気持ちでした。
嬉しいんですよ、やっぱり。知らない仲ではない方にお仕事を依頼されるっていうのは。以前一緒にお仕事をしたときの信頼があって、僕ならできるという確固たる期待をしてくれてお願いしてくれたんだろうなと。役者ってそういう信頼関係のつながりだとも思っているから、嬉しさもあったし、頑張ろうと。
そもそも『僕ヤバ』は、アニメになる前から話題になっていましたし、あちらこちらで見かける作品じゃないですか。だからもちろん作品は知っていたんですけど、これをきっかけに改めて原作を拝見しまして。「ナンパイって面白い役だな」と思いました。もしもただのチャラいキャラクターであれば、僕じゃなかったかもしれないな、と思うんです。わざわざ僕を指名してくれた理由は、ナンパイのバックボーンが前提にあるのかなと。だから、意気揚々と返事しましたね。あとはその期待に応えなきゃ、と。いつもプレッシャーを感じる仕事ですけども、今回は良い意味でプレッシャーを感じながら演じていました。
――インタビューで制作陣にもお話をおうかがいしていますが、この配役は完璧だ、といった旨を皆さんおっしゃていて。
島﨑:嬉しいことだ。ありがたい。「バッチリだね」って話を(岡本)信彦さんともしているんですよ。この作品の中で、ホリエル(堀江瞬)と、信彦さんと、僕がどの役をやるか、って言ったらこの配置になるよね、ベストだよねって。
――『僕ヤバ』は島﨑さんにとってどのような現場ですか?
島﨑:全ての収録を見ているわけではないですが、一言で表すなら「良い現場」。まず僕からすると、信頼しているスタッフばかりで。素敵な先輩から同輩、後輩までいますし。それと、ちゃんと役者が育つ現場だなぁと。それこそ、羊宮(妃那)さんは事務所の後輩だから、現場でも気にかけているんですよ。でも彼女ってお芝居に対してしっかりとした思いがある人で、もともと持ってる質感もすごく強いから、全然心配はしていないんですけども。
現場でも、心を砕いて取り組んでいて。そこに高度なディレクションが入っても、空気が悪くなることもなく、ちゃんと吸収して、学んで、それを声に出している。で、ホリエル(堀江瞬)は言わずもがなですし。すごくいい形で進んでいったと思います。真ん中ふたりがめちゃくちゃ腰が低くて、それが面白い(笑)。
――(笑)。
島﨑:ふたりとも、アフレコの時にめちゃくちゃ端っこに座るんですよ。「随分端っこにいるなー!」って。新人が座る下座にふたり揃っているんですよ。だから僕が主役のようになってることも(笑)。

――女子3人(小林 ちひろ役・ 朝井彩加さん、関根 萌子役・ 潘めぐみさん、吉田 芹那役・種﨑敦美さん)は「ずっと見守ってたい!」という気持ちになる、とおっしゃっていました。
島﨑:周りのキャストが思わず主役を立てたくなる、ってすごく良いことだと思うんですよ。座長っていろいろなタイプがいると思うんですけど、すごく良い座長だと思いますよ。